Green Rhythm代表のコジマが、食と農をテーマにゲストとゆるく深く語り合うコーナー、「ゆる深トーク」。
今回のゲストは、神奈川県相模原市を拠点に自然農法の野菜を移動販売している「その町のほんの小さな八百屋 まる然」代表の尾崎将太さん(以下、しょうたさん)です。
「自然農法」「自然栽培」などの言葉の意味は、なんとなくわかったつもりになっていますが、よくよく考えてみるとどういうこと?
その疑問について、しょうたさんにじっくり聞いてみました。
相鉄線さがみ野駅前「Cafe the Dip’s」さん店頭にて。自然農法の野菜を前にしているしょうたさんは、いつも生き生きしています。(2020年8月撮影)
自然農法には「3原則」がある
コジマ:「ゆる深トーク」へのご参加、ありがとうございます。「まる然」さんのことは、以前にも記事で書かせていただきました。その中で「自然農法の野菜を移動販売している八百屋さん」としてご紹介しているのですが、実は「自然農法って何?」ということには触れていなかったんです。
そこで、あらためて自然農法についてお聞きしてみようというのが今回のテーマです。
しょうたさん:「自然農法」「自然栽培」「自然農」など、いくつかの言葉がありますが、絶対にこうだという定義はないんですよね。人それぞれの考え方があります。
「まる然」としての考え方をお話しすると、「自然農法」には3つの原則があります。
1. 耕さない
野菜を育てる前には土を耕すのが一般的ですが、耕さないほうが良いという考え方もあるんです。土を耕すと、土の中の小さな虫や微生物が作り上げた環境が崩れてしまうからです。土の中を本来の自然の環境に近づけることで、生き物の多様性を大事にして、栄養の豊富な土にすることを目指すのが、不耕起栽培(耕さない栽培方法)です。
2. 持ち込まない・持ち出さない
「持ち込まない」というのは、畑の外で作られたもの(農薬・除草剤・肥料など)を持ち込まないことです。「持ち出さない」というのは、畑で刈り取った草などを外に出して捨ててしまうのではなく、草マルチや堆肥などにして畑の中で利用することです。そうすると、畑の中で有機物などが循環していくようになります。
3. 草や虫を敵としない
雑草が生えていると野菜が育たないし、虫がいると野菜が食べられてしまうと思われるかもしれませんが、雑草も虫も畑の生態系の一部です。雑草は風や乾燥から土を守ってくれます。野菜を食べる虫もいれば、その虫を食べる虫もいます。いろいろな生き物がいて、食物連鎖があるからこそ、土が豊かになるんです。そこに人間が無理に手を加える必要はないと思っています。
コジマ:自然農法の3原則、覚えておきます。ただ、私も自分で野菜を育てているから思うのですが、この3原則を全部きっちりやるとなると大変ですし、畑の条件によってはなかなかうまくいかない場合もありますよね?
しょうたさん:そうですね。だから、どのようにやっていくかは人それぞれの考え方によると思います。
農家さんによっては畑の全部が自然農法というわけではなく、一部は耕したり、米ぬかなどの肥料を入れたりしている方もいらっしゃいます。そのように、3原則とはまた違う考え方で無農薬・無化学肥料を実践している栽培方法を、僕は「自然栽培」と呼んでいます。そして、自然農法と自然栽培を合わせて「自然農」と呼んでいます。
コジマ:なるほど!「まる然」さんの考えでは、自然農法と自然栽培は、やり方が違うということですね。
「まる然」さんで取り扱っている、神奈川県愛川町の「わんぱく自然農園たむそん」さんの野菜。米ぬかやボカシ、籾殻くん炭なども使わずに自然農法を実践しているそうです。(2020年8月撮影)
まる然さんの仕入れの決め手は「農家さんの想い」
コジマ:「まる然」さんが野菜の仕入れ先を決めるときの基準はあるんですか?
しょうたさん:まずは、農薬や除草剤、化学肥料を使っていないことが大前提です。それ以外の部分は、さっきも言った通り、農家さんによっては自然農法と自然栽培を両方やっていたりするので、切り分けが難しいんですよ。
なので、自然農法か自然栽培かという点にこだわりすぎないで、農家さんとお話しして、想いや人柄を確認して仕入れるかどうかを決めています。
コジマ:農家さんとのコミュニケーションが大事ということですね。たね(種子)については、どう考えていますか?
しょうたさん:固定種(※1)を大切にしたい気持ちはありますが、F1種(※2)も仕入れるのはOKにしています。あとは、農家さんが種子から育てているか、苗を買ってきているかという話ですよね。苗を買ってくると、その苗の土には自然農法で使わないもの(肥料など)が入っている可能性もあります。でも、そこの判断は農家さんにお任せしています。
※1 固定種 何世代も採種を繰り返して、形や性質が固定された種。
※2 F1種(一代交配種) 異なる親をかけ合わせて生まれる種。形や性質が揃いやすいというメリットがあるので、広く利用されています。
コジマ:わかりました。「まる然」さんの野菜の仕入れ先は、今のところ何カ所くらいですか?
しょうたさん:相模原市が拠点なので、そのあたりが多いですね。藤野(相模原市旧藤野町)が2カ所、津久井(相模原市旧津久井町)が4カ所。それと、愛川町の「わんぱく自然農園たむそん」さん。合計7カ所です。
コジマ:神奈川県内で自然農法を実践されている農家さんが、そんなにいらっしゃるんですね。心強いです!
しょうたさん:今後は、もっと仕入れ先を増やしていきたいと思っています。
自然農法で育てられた野菜は、あまり大きくならなかったり、形がバラバラだったりします。それらも野菜の魅力として味わいたいですね。(2020年7月撮影)
おわりに
しょうたさん:自然農法って、土を耕さなかったり、雑草が生えていたりするので「ほったらかし」と思われることもあるんですが、本当は難しいんです。種まきとか手入れとか、どの時期に何をやるべきかをちゃんとわかっていないと、野菜が育たないんですよ。
コジマ:そうですね。自然農法はすごく手間がかかっていると思います。そういうことも含めて、たくさんの方に自然農法や自然栽培のことを知ってもらえたらいいなと思っています。
しょうたさん:これからも「まる然」は、がむしゃらにがんばりますよ!
コジマ:はい、応援しています!今回は「ゆる深トーク」へのご参加、ありがとうございました。
「まる然」さんのことをもっと知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。
自然農法の野菜を移動販売!「その町のほんの小さな八百屋 まる然」さん
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今回の取材にご協力いただいたお店
【Cafe the Dip’sさんへのアクセス】
神奈川県海老名市東柏ケ谷2-30-10-102
相鉄線さがみ野駅南口から徒歩2分
15:00~23:00 日曜日定休
※喫煙OKのお店です。原則として20歳未満の方はイートインのご利用ができません。テイクアウトをご利用ください。
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「Cafe the Dip’s」さんのアメリカンワッフル(提供時間は15:00〜19:00、テイクアウト可)。イチゴがゴロゴロ入っている自家製ストロベリーソースは、イチゴ好きにはたまりません。(2020年8月撮影)