「ゆる深トーク」は、Green Rhythm代表のコジマが食と農をテーマに、ゲストとゆるく深く語り合うコーナーです。
前編に引き続き、ゲストは友人のシェフ・亜妃琉まことさん。2020年8月8日に公開された映画「もったいないキッチン」の感想も交えながら、フードロス(食べ物が捨てられてしまうこと)について語り合います。
「もったいないキッチン」を鑑賞してきました!
JR関内駅から5分ほど歩いたところにある「横浜シネマリン」というミニシアターで、映画「もったいないキッチン」を鑑賞しました。
※「もったいないキッチン」とは?
オーストリアからやってきた食材救出人で映画監督のダーヴィド・グロスさんが、日本各地を巡って捨てられそうな食材で料理をしたり、フードロスを減らすための取り組みを取材したりしながら、日本の食文化や「もったいない」という精神に触れていくロードムービーです。
(配給:ユナイテッドピープル)
横浜シネマリンのレトロな外観。中はリニューアルされていて、きれいです。感染症対策のため、1席ずつ空けて座るようになっていました。(2020年8月撮影)
コジマ:「もったいないキッチン」を見て、どうでしたか?
あひるシェフ:映画のテンポが良いですね!チャプターで細かく区切ってあるので、見やすかったです。
コジマ:情報量はかなり多いですが、楽しく見られますね。95分、あっという間でした。
あひるシェフ:東京のコンビニで、その日に廃棄される予定の食べ物を見せてもらうという身近なところから始まって、原発、プラスチックごみ、エネルギー問題など、だんだん大きなテーマに広がっていくのも、わかりやすくて良かったです。
コジマ:私としては、映画の中で餃子を作るシーンがあったのが嬉しかったです。あひるシェフが、余った食材をおいしく生まれ変わらせる料理としておすすめしてくださったのが餃子でしたよね。
あひるシェフ:餃子、出てきましたね。いろいろな具を包んでバリエーションを増やせるのが餃子のいいところです。
(※餃子についてのトークは、ぜひ前編をご覧ください)
コジマ:あとは、鰹節を作っている方のところへ行くシーンもありました。それでハッとしたんですが、鰹節って魚を長く保存するために作るものなんですよね。普段、あまり意識していませんでしたが。
あひるシェフ:そうですね。日本の発酵食品の文化って素晴らしいと思います。鰹節だけじゃなくて、味噌とか、醤油とかも。
鰹節を作る過程で頭や内臓は取ってしまうけれど、それをちゃんと利用するので、捨てるところがないというのも良かったですね。
コジマ:ただ、鰹節がどのように作られているかということや、鰹節の本来の姿について知らない人も多いでしょうね。スーパーで袋に入って売られている「削り節」が、鰹節の姿だと思ってしまっている。
あひるシェフ:なかなか、鰹節を丸ごとの形で見ることはないですからね。丸ごと買ってきても、家で削るのは大変ですよ。
コジマ:たしかに(笑)。でも、そういうことも含めて、もっと食材を知ることが大事だなと思いました。
フードロスの問題は、システムの問題
コジマ:「もったいないキッチン」を見て感じたのは、フードロスは、何か一つの対策で解決できるものではないということです。フードロスが出てしまう背景には、個人レベルから社会レベルまで、さまざまな原因がありますから。
あひるシェフ:映画の中でも「システムの問題」だといわれていましたね。食品工場では、発注が来たらすぐ対応できるよう、多めに食べ物を作っておかなくてはいけない。だから作りすぎてしまって、廃棄する分が出てしまうのだと。
コジマ:なんとかしたいと思っても、今すぐにシステムを変えようとするのは難しいですよね。コンビニを全部なくしてしまおう、というわけにもいかないですし。
私は会社員時代、コンビニのご飯に救われていた時期もあったんです。他のお店が全部閉まっている時間帯にしか、夕飯を食べられなかったときとか。だから、そういうシステムが絶対に必要ないとは言い切れないと思っているんです。
あひるシェフ:その通りですね。とはいえ、そんな遅い時間まで働かなくてはならないというのも問題の一つなんでしょうけど。
フードロスも働き方も、根本的には「社会のシステム」を変えていかなければ解決しないんですが、まずは一人一人の意識を変えていくことが大切だと思います。目の前のフードロスに意識を向けてみるとか、自分にできることからやっていけばいいんじゃないでしょうか。
横浜シネマリン近くの「台湾家庭料理 口福館」にて。麻婆春雨は辛すぎず、味わい深くておいしかったです。(2020年8月撮影)
フードロスを減らすには?
コジマ:今回の「ゆる深トーク」では、フードロスについて前後編でお送りしてきました。締めくくりとして、あひるシェフにお聞きしたいです。フードロスを減らすには、どうしたらいいと思いますか?
あひるシェフ:自炊する前提で、家庭でのフードロスを減らす話になりますが、僕は「一人一人の調理技術の向上」が重要だと思います。技術が伴わないと、フードロスが増えてしまうんですよ。
コジマ:わかります。私は最近になって料理をするようになったので、とにかく手際が悪くて、食材をこぼして無駄にしてしまったこともありました。
それに、ちゃんとした知識がないと何が食べられるのかわからなくて、食べられる部分を捨ててしまうこともあるでしょうし。
あひるシェフ:知識を身に付けることも大切ですね。「もったいないキッチン」に出てきた昆虫食や野草食などは特に、専門知識のある人がいないと危険なこともあります。
僕は「料理の“理”は理屈の“理”」だと考えています。なんとなくでやるのではなく、なぜそうするのか、なぜそうなるのかをきちんと理解して料理することが肝心なんですよ。
コジマ:なるほど!料理には理屈が必要なんですね。
あひるシェフ:僕が卒業した学校の校長先生(※服部栄養専門学校の服部幸應先生)は、料理は「だしと塩梅と火加減」だとおっしゃっています。「だし」は、素材が持っている味。「塩梅」は味付け。「火加減」は、どのように火を使うかということ。 調理技術を向上させるにはまず、この3つを理解していくべきだと思います。
コジマ:「だしと塩梅と火加減」、覚えておきます。
あひるシェフ:フードロスをなるべく出さない料理をするためには、「今ここにあるもので何を作れるか」を考える力を養うと良いですよ。調理の理論がわかっていれば、足りないものがあってもうまく代用しながら、食材や調味料を使い切る方法を見つけられるはずなので。
コジマ:わかりました。私も、調理の理論と技術を身に付けられるようにがんばります。ところで、餃子以外に、余り物を使い切るのにおすすめの調理法ってありますか?
あひるシェフ:水を使って食材を煮込む料理は作りやすいですよ。味噌汁とか、ごった煮とか、カレーとかですね。しっかり火を通すので、少し鮮度の落ちた食材でも安心です。
コジマ:それなら私にもできそうです!
同じく「台湾家庭料理 口福館」の魯肉飯(台湾風肉丼)。あひるシェフのおすすめです。お肉がっつりですが、高菜の風味で口の中がさっぱりするので食べやすく、箸が進みます。(2020年8月撮影)
おわりに
あひるシェフ:「もったいないキッチン」の最後に、大勢で料理を作って盛大にパーティーを開くシーンがあって、それがすごく良かったですね。
コジマ:私もそのシーン、大好きです。賑やかで、おいしそうで、みんな楽しそうでしたね。
あひるシェフ:食の体験って、同じ空間で同じものを食べることに意義があると思うんです。その感動は、リモートではなかなか伝わらないんですよ。今は新型コロナウイルスの影響で大規模なイベントは開催しにくい状況ですが、いずれはああいうことをやりたいです。
コジマ:みんなで一緒においしいものを食べるというのは、それだけで素晴らしい体験ですよね。私も、あひるシェフのお料理を食べられるイベントを、また開催できる日を心待ちにしています。
あひるシェフ、「ゆる深トーク」へのご参加ありがとうございました!引き続き、他のテーマでもいろいろトークしていきたいと思っていますので、またよろしくお願いします。
あひるシェフに会いたいと思った方は、こちらのお店へ。
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【参考サイト】
・もったいないキッチン
・横浜シネマリン