最近はご自宅で野菜を育てる人が増えているそうですね。
野菜を育てようと思ったら「たね(種子)」が必要です。
「たね」をまいて花が咲き、実がなれば、次の世代の「たね」ができます。でも、その「たね」をとってはいけないと誰かに言われたら、どう思うでしょうか。
Green Rhythm代表のコジマが、「たね」をテーマにしたドキュメンタリー映画「タネは誰のもの」の上映会に参加してきました。
上映会の後は、たね交換会も開催されました。上映会とたね交換会のレポートをお届けします。
「たね」について学び、考えるきっかけとなる映画
「タネは誰のもの」は、「お百姓さんになりたい」などの作品で知られる原村政樹監督が2020年に発表した映画です。
【ストーリー】
2018年4月、種子法廃止
そして2020年10月、種苗法改定案の国会審議が再び始まる
急速なグローバル化の中であらためて問われるタネの権利とは
2020年6月に国会成立が見送られ、継続審議となった種苗法改定の動きに対して賛否が渦巻く中、自家採種・自家増殖している農家と種苗育成農家の双方の声を伝えるため、北海道から沖縄まで様々な農業の現場を取材。政府が拙速に改定を成立させようとしている中、種苗法改定(案)が日本の農業を深刻な危機に陥れる可能性を、専門家の分析も含め農業の現場から探った。
(「タネは誰のもの」公式サイトより引用)
映画で取り上げられている「種苗法改定」について、ここでは「登録品種を農家が自家採種・自家増殖するのに、育成者の許諾が必要になる」とだけ説明させていただきます。
登録品種とは、その品種を育成した人が農林水産省に登録を出願し、審査を経て登録されたものです。
どんな品種が登録されているのかは、農林水産省品種登録ホームページの「品種登録データ検索」で検索することができます。
映画の中で主に紹介されているのは、たねを買うのではなく、自分たちで育てた野菜からたねをとって次の年につなげる「自家採種・自家増殖」を行っている農家さんたち。
それが登録品種の場合、種苗法が改定されたら毎年たねや苗を買わなくてはいけなくなるのではないか?
そうなったら農家さんの経済的負担が増えるのではないか?
という問題を軸に、巨大企業がたねを独占してしまったら農業はどうなるのかという懸念にも触れながら、映画のストーリーは進んでいきます。
種苗法改定に反対する立場から構成された映画ですが、種苗法改定を歓迎している育成者さんの話を聞くシーンもあります。
「種苗法改定への反対」を一方的に押し付けないところがよいと感じました。
一番印象に残ったのは、「食料に対しては権利を主張すべきではない」という農家さんの言葉です。
育成した人の権利を守るのは当然のことのように思えますが、人間が命をつなぐために必要な食料に対して「誰かが権利を持っている」という状態が、果たして本当に適切なことだろうか?という問いを投げかけてくれる映画でした。
個人的には、法律についての難しい議論をするよりも、まずはこの映画を通して「たね」に興味を持っていただけたらいいなと思っています。
それぞれの思いを持って「たね」に向き合っている農家さんたちがいることと、それを支えようとしている人たちがいることを、多くの方に知っていただきたいと思いました。
インゲンのたね。品種によって、色や模様はさまざまです。(EdiblePark茅ヶ崎にて、2020年11月撮影)
※「種苗法の一部を改正する法律」は、2020年12月2日に成立しました。「登録品種の増殖は許諾に基づき行う」という条文は2022年4月1日から施行されています。詳しくは農林水産省のサイトなどでご確認ください。
みんなで「たね」をまこう!Share Seedsのたね交換会
上映終了後には、たねの交換会も行われました。交換会は、固定種のたねを分かち合うプロジェクト「Share Seeds」の有志が行っている活動です。
「タネは誰のもの」という問いに対して、「タネはみんなのもの」と提案している活動といえるでしょう。
※「Share Seeds」のたね交換会は、登録品種ではないものを対象としています。詳しいルールはShare Seedsのサイトをご確認ください。
今回は、Share Seedsの活動に参加されている小林宏行さん(以下、コバさん)にお願いして、「たねBOX」を持って来ていただきました。
会場となった「エコストア パパラギ」に常設されている「たねBOX」に加えて、コバさんのBOXも並び、たくさんのたねが勢ぞろいしました。
たね交換会の様子。参加者はビンや袋に入ったたねの中から、育てたいものを選び、必要な量だけを持ち帰ります。(2022年5月撮影)
交換会にも積極的に参加してくださる方が多く、「プランターでも育てられるものはどれ?」「どうやってまけばいいの?」など、質問が活発に飛び交いました。
ニンジンのたねに、皆さん興味津々!コバさんが、たねのまき方を伝授しています。(2022年5月撮影)
たねを受け取った方の多くが、「さっそく育ててみます!」と楽しそうにおっしゃっていたのが印象的でした。
この日初めて会った人どうしでも、たねがあれば会話が弾みます。「あげる/もらう」という1回きりの関係ではなく、「自分で育てた野菜のたねを返したい」という関係なら、人と人とのつながりも長く続いていくのではないかと期待しています。
「たね」を通して、命の循環を考える
上映会の後で、コバさんに感想をお聞きしました。
「本来、植物の命は循環している。人間がそれを勝手に区切って、たねや苗の権利を主張し過ぎるとゆがみが生じてしまうのではないかと思います。
自分が食べる野菜を育て、たね取りをして命をつなぐ行為は本来、幸福を感じやすい暮らしの営みではないでしょうか。
命の循環を感じるには、実際にやってみるのが大切です。まずは自分の庭や、プランターにたねをまいてみる。期待したほど収穫できなかったとしても、たねをとることができる場合もあります。
そうやって植物の命が循環していくんです。楽しみながらやってみてください」
穏やかだけれど力強いコバさんの言葉に、自分もEdiblePark茅ヶ崎での自家採種を頑張っていこう!と元気をもらいました。
たくさんのたねがとれたらシェアして、そのたねがまたどこかで育ってくれれば、それほど嬉しいことはありません。
「エコストア パパラギ」に設置されている「たねBOX」から、いつでもたねを受け取ることができます。ご興味のある方は、たねをつなぐ活動に参加してみませんか?
エコストアパパラギ店内の「たねBOX」。場所がわからない場合はお店のスタッフにお声がけください。(2022年5月撮影)
小林宏行さんのブログでもShare Seedsの活動について紹介されています。ぜひこちらもご覧ください。
タネをシェアする「Share Seeds」をやってみた
ワークショップ会場「エコストア パパラギ」
小田急線・JR東海道線藤沢駅から徒歩4分。人と自然に配慮した雑貨や食品を取り扱う「プラスチックフリー・量り売り」の専門店です。
2022年より、イベント用スペースとしてお店の2階の貸し出しが始まりました。これまでにも、環境問題をテーマにした上映会や、アフリカンダンス、SDGsボードゲームなどのさまざまなイベントが開催されています。
詳しくはWebサイトをご覧ください。
参加者・主催者共に募集!ワークショップ | エコストア パパラギ
【Share Seedsの活動について】
「ありがとう」で広がる固定種の交換会!「Share Seeds」をやってみた
藤沢駅前「エコストア パパラギ」さん〜「Share Seeds」たねBOX設置店を訪ねてみよう〜